Hagexさんの思い出(ハッカージャパン、セキュリティ・キャンプ、CodeBlue)

昨晩、0時を過ぎていたと思う。ニュースで見た修羅の国「福岡」で刺されたというIT講師、どうも、イベントの記録を見ると、僕が5年ほど前に愛読していた炎上系blogのHagexの管理人さんらしいということに気が付いた。そのときは、ネットウォッチという共通の趣味とBlogのファンでもあったし、怪我されて大変だなぁ、もらい事故?と、思っていた。


程なく、どうも亡くなったらしい、しかも、園田さんがワールドカップの試合中にもかかわらず「セキュリティキャンプの立ち上げ時に取材していただいてお世話になったのに非常に残念だ」と書かれているのを見た。

 

え、まって、もしかして、めっちゃ知り合い?と、動揺しながら、被害者の本名で検索してみた。画像検索結果を見て、手が震えた。


ハッカージャパンの岡本さんじゃん!俺、めっちゃ知ってる。というか、ハッカージャパン連載時のおいらの元編集者さんやん。10年ほど前に、毎日のように、原稿のやり取りをしていた記憶が走馬灯のようによぎった。嫁でも名前を覚えていたくらいで、我が家の夕飯時にお名前が出るくらい濃密なコミュニケーションを一時期していた方だった。


子育てが忙しくなって、原稿をだんだん書かなくなったのだが、最後に原稿のやり取りをしたのは、Windows8のセキュリティ記事の時だったと思う。ピンチヒッターでお願いされて、急いで書いた記憶がある。そのときも、非常に低姿勢で、丁寧な対応だった。


夜の11時ごろに1万文字ちかい原稿を納品して寝た。彼からのメール「これから帰りますが、地下鉄で帰る道すがら原稿チェックしますね」を読んだのは次の日の朝だった。送信時間は0時30分だった。僕が「原稿チェック、地下鉄じゃ大変じゃないですか?」と、メールで返したら、岡本さんから「Simplenoteというアプリならオフラインで原稿がチェックできるので大丈夫です」という、大丈夫なのか、大丈夫じゃないのか良くわからない返事が返ってきた。

 

セキュリティ・キャンプの当初の立ち上げ時に特集記事を組んでいただいたのも、非常にありがたかった。今でこそ、キャリアプランの一つとして認知されたセキュリティ・キャンプだけど、当初は、大学に行っても誰も知らなかった。そういった中で、参加者のインタビュー記事まで載せていただいて、それを手に高専や工大に営業に行くときの紹介に使わせていただいたりした。本当に助かりました。


あの後、ご存知のようにハッカージャパンが休刊になって、岡本さんはスプラウトに移られた。僕も原稿をあまり書かなくなったし、セキュリティキャンプの中央大会への講師参加も2013年が最後で、その後は地方大会オンリーになってしまって接点がほとんどなくなっていた。


最後に会ったのは、確か2014年のセキュリティカンファレンス「CodeBlue」のときだったと思う。

 

久しぶりに会った岡本さんは、 

「お久しぶりです。いま、スプラウトというセキュリティ企業にいます。WEB媒体のメディアですが、原稿募集してますので、また原稿書いてくださいよ!」

 

と、楽しそうにおっしゃられていた。CodeBlueの全講演をSonyのハンディーカムで記録して原稿起こしをされていた。相変わらず丁寧な仕事をされているなぁと思った。

途中、A.R Drone 2.0のハッキングデモを見て、MACアドレス詐称で認証乗っ取れるし、不要なサービスがデフォルトで開いているし、デフォルトパスワードだし、2000年代初頭のインターネットサーバのデジャブ感じますよね!といった話題で盛り上がった。技術もちゃんと追いかけている方だった。

 

今振り返ると、愚直なまでに淡々と仕事をこなす岡本さんと、ネットウォッチ系Blogがほぼ絶滅危惧種になりつつある状況で、ほぼ毎日更新されていた求道者のHagexさんは、やっぱり根は一緒だったんだろうなと思う。

 

実は、日大アメフト部の内田前監督のネタがあったので、このビッグウェーブにひとつのってみるかと、危機管理の失敗事例としての原稿を書いていた。危機管理だし、セキュリティの切り口でスプラウトさんなら原稿を持ち込めるかなぁと思っていたのだが、原稿を発表する前に内田前監督が辞任してしまったので、旬をはずしたと思ってお蔵入りにしてしまった。それがちょうど1ヶ月前、あのときにさっさと原稿を完成させて、彼に連絡を取っていれば、何か未来が変わっただろうか?


いや、その時点でも、僕は彼とHagexさんが同一自分だとは知らなかったのだから、この事案は防ぎようがない。そもそも、犯人の低能先生は、刺す相手として誰でも良かったようだし、誰も予測なんかできやしない。とりとめもなく、このやり場のないもやもやをBlogに書き起こしている。


落ちはない。ただ、人生、一寸先は闇。後悔しないように、自分も前に進んで、インプットとアウトプットを強化していこうと思う。

とりあえず、自分の宿題として彼の著作を読もう。(所用執筆時間50分)

  

闇ウェブ (文春新書)

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